紛争の内容
1 被相続人実父、同実母の遺産分割を、依頼者長男に対して申立てられた調停事件
2 実父名義の上にある、貸店舗(未登記)の遺産確認請求訴訟事件

交渉・調停・訴訟などの経過
1 遺産分割調停事件において、未登記店舗は亡父の遺産であるとの主張に対し、当方依頼者長男の所有であるとして、遺産性に争いが出た。
2 同店舗は建設協力金方式によるもの(初代賃借人提供)で、現在、3代目テナント賃貸中。
3 賃貸名義人は、いずれも、長男。店舗建設請負契約も注文者長男。しかし、他の共同相続人は、実質実父と主張。これに対して、確定申告書の写し等を提出するも、申立人らは納得せず。
4 調停不調。申立人取下げ。
5 さいたま地裁で審理(被告長男勝訴)、控訴審における和解不調(長男、一次相続において、共同相続人母より相続分譲渡ありと主張したいという意向あるととも、本訴訟では解決したくない)。
6 勝訴判決。判決確定。

本事例の結末
1 遺産確認訴訟で、貸店舗が長男の所有と確定。
2 長女、二女より、改めての調停申立てがあれば、引き続きの調停代理対応可能と提案。
3 当方よりの新規の申立てであれば、改めての委任契約(減額した着手金)の締結を案内。追加費用がかかるなら、いったん終結したいとの要望。貸店舗の底地固定資産税の負担を他の共同相続人求めたいという相談に、自ら利用している場合に、その納税額を遺産管理の費用としても、利用者に負担させた判例ありとの回答が不本意であったよう。

本事例に学ぶこと
1 被相続人名義の土地上での、長男貸店舗経営はよくある話。
2 しかし、長男は埼玉県伊奈町在住、実母がテナント対応していた(長男が給与支払う)ことから、他の共同相続人は、実父母の所有・賃貸と誤解。
3 法律知識の誤解から、永年未登記であり、調停取下げ後、遺産確認訴訟提起前に、長男名義に保存登記。
4 特別受益の持ち戻し問題はともかく、権利関係の明確のため、登記の具備は不可欠。
5 なお、一次相続における、母からの相続分譲渡の主張については、証明書はなく、かなり難しいと思料され、依頼者長男は思い込みが強く、当該主張について否定的なコメントも、弱気と評価されたようであった。