ご高齢でお亡くなりになった方は、生前、年金を受給しながら生活されていた方も多いと思います。年金も、銀行口座に振込まれて預金となれば、遺産分割の対象となります。

しかし、例えば国民年金は2ヶ月に1回の支払いですから、亡くなったタイミングによっては、未支給の部分が出てきます。
この未支給部分については、遺産分割の対象となるのでしょうか?

国民年金法19条1項は、上記のような未支給の年金については、

「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの」が、「自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる」

と定めています。

すなわち、配偶者等のご遺族が、自己の固有の権利として請求するものであり、相続とは別の制度であるということです。
したがって、このような未支給の年金については、遺産分割の対象とはなりません。

では、亡くなった方を被保険者とする生命保険の死亡保険金はどうでしょうか?
生命保険の場合には、死亡保険金受取人を指定して契約をします。

そうすると、死亡保険金は、受取人が自己の固有の権利として請求するものとなりますから、やはり遺産分割の対象とはなりません。

一方で、死亡保険金は、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していた場合には、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となり得ます。

つまり、死亡保険金は相続や遺産分割の対象となる遺産には該当しないが、相続税の課税対象になることがある、ということです。

同様に、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になるものの遺産分割の対象とはならないものとしては、死亡退職金や個人年金が挙げられます。
(ちなみに、上記の未支給の国民年金については、請求者の一時所得として所得税の課税対象となり、相続税の課税対象にはなりません。)

このように、遺産分割の対象になるかどうかと、相続税の課税対象になるかどうかは、全く別の問題であり注意が必要です。

また、例外的に、ある相続人が高額の死亡保険金を受け取ったために著しい不公平が生じている場合には、特別受益に準じて持戻しの対象とし、相続財産の計算を行うとした最高裁判例も存在しますので、死亡保険金が遺産分割と全くの無関係とも言い切れないという問題もあります。

遺産該当性のみならず、相続や遺産分割については様々な視点があります。ケースバイケースで結論が異なることもあり得るため、判断に迷われた場合は、是非一度弁護士までご相談下さい。

前回の記事→「遺産該当性」(その財産が相続や遺産分割の対象となるのかどうか)について

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