紛争の内容
成年後見制度とは、病気や事故などにより判断能力が不十分になった人(本人)の援助をする人(成年後見人といいます)を選定し、本人の代わりに法律行為を行い、身上監護、財産管理に従事します。
今回は、病気により施設に入居されていたご本人について、相続が発生しており、遺産分割を進める必要があったことから、ご家族が成年後見人選任を家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所から、弊所の弁護士に依頼があり、成年後見人に就任しました。
様々な業務がありますが、主な業務は、他の相続人との遺産分割協議を進めること、遺産の内、不動産を売却することにありました。
交渉・調停・訴訟などの経過
まずは、成年後見人として、他の相続人に連絡をとり、遺産分割の方法等について協議を重ねました。不動産については、どなたも保有する必要がなく、売却して金銭に代え、法定相続分に従って分け合うことになりました。
本事例の結末
不動産会社と折衝しつつ、しばらく買い手がつきませんでしたが、運よく買い手が見つかり、不動産売買契約を締結し、売買代金を受け取りました。
その後、売買代金を他の相続人と共に法定相続分に従って分ける内容とし、その他調整した上で、遺産分割協議書を作成しました。なお、税務申告が必要であったことから、特例等を利用しつつ、申告を済ませました。
本事例に学ぶこと
成年後見人は、本人の利益を尊重しつつ、本人の代わりとなって判断する必要があります。その判断の背後には、家庭裁判所裁判官の意見を参考にすることもあります。本人の代わりですので、遺産分割協議においても、協議が整わなければ、調停、調停が不成立になれば、裁判を行う必要がありました。
幸いにして、相続人同士で、法定相続分に従って分割することや不動産を売却することで方向性が一致したため、協議の中で話をまとめることができました。
なお、後見人に選任されるとき、裁判所から課題として遺産分割があることを聞いており、その問題が解決した後には、申立人等ご家族に後見業務を委ねることも検討事項に上がっておりました。
結論としては、ご家族に後見業務を引き継いで、私の後見人の任務は終了しました。
弁護士 時田剛志