事案の内容
AさんとBさんは、長年夫婦同然の生活を送っていましたが、籍は入れておらず、事実婚の状態でした。
ある日、内縁の夫であるAさんが急死してしまいました。
自宅不動産や車はAさんの名義でしたが、Aさんには相続人が誰もいなかったため、特別縁故者への財産分与を求めて、内縁の妻であるBさんが相続財産管理人の選任を申し立てました。

事案の経過(交渉・調停・訴訟など)
当職が相続財産管理人に選任され、相続人の捜索・債権者への請求申出の公告などの諸手続きを行うとともに、申立人であるBさんと面談してこれまでのAさんとの生活ぶりを聴取し、Aさんの財産関係の調査や確認を行いました。
Aさんは1000万円程度の預金も遺しており、ここから未払いとなっていた債務(固定資産税や電話料金)を支払うことができました。
車については、早期に名義変更しないとBさんが使用できずに困るため、査定評価のうえ、時価相当額でBさんに買い取ってもらいました。
自宅不動産と残りの預金については、Bさんが特別縁故者への財産分与の審判を申し立て、これに対して、相続人財産管理人として、「AさんとBさんは、法律上の夫婦と何一つ変わらない生活を送っていたのであり、財産形成への寄与にも鑑みて、残余財産は全てBさんに取得させるのが相当である」との意見書を書きました。

本事例の結末
Aさんの残した財産から債務等を控除した残余財産(預金、不動産)につき、全てBさんが取得するとの審判が出て、相続財産管理人事件も終了しました。

本事例に学ぶこと
本件は、内縁の夫が急死してしまい、相続人も皆無であったことから、内縁の妻が相続財産管理人選任を申し立てた事案でした。特別縁故者への財産分与制度によって、残余財産の全てを内縁の妻に取得してもらうことができ、内縁の妻は生活基盤を失わずに済みました。
相続財産管理人(現在は「相続財産清算人」)選任申立をした甲斐があったと思います。

弁護士 田中智美