本事例は、税理士・弁護士・司法書士が運営する「相続・遺言さいたま相談室」のHP上で2015年5月7日に公開されたものです。そのため、現行の法律・制度とは異なる場合があります。
グリーンリーフ法律事務所では、税理士・司法書士等の専門家と協力関係を構築し、相続分野のフルサポートを目指しています。
法律相談をお受けする際、「先生、父が亡くなったのです。相続ですから父の遺産をどのように分けるか決めなければならないんですよね。いつまでにする必要があるのですか? 期限とかあるのでしょうか?」というご質問を受けることがあります。
確かに、相続税を納めなければならない事案については、相続税の納期限の関係で期限があるといえます。
しかしながら、民法の規定上は遺産分割をいつまでにしなければならないという期限はありません。したがって、実は長年相続をしないで明治とか大正、昭和初期に亡くなられた方が現在も所有者となっている土地も存在するのです。
この場合、長期間名義変更されずに放置されている間に相続が子の代、孫の代、曾孫の代と発生し(このように相続が連続することを数次相続といったりします)、法律で定められた相続人=法定相続人が数十名にもなることがあるのです。
こういった場合、どうすればいいのでしょうか。
まずは、現在も所有者として名前が残っている方の相続人を確定させる必要があります。
具体的には、その方の出生から死亡までの戸籍を取り寄せその相続人を確定し、さらにその相続人の出生から死亡までの戸籍を取り寄せ、子の代、孫の代それぞれの相続人を確定させることになります。
この点、コンピューター化された現代において相続人の確認=戸籍の取り寄せはそう難しくはありません。しかし、例えば、明治時代に亡くなられた方の場合、戸籍が不完全であったり、戦時中に焼失したなんてこともあり、相当の労力が必要となります。
そして、仮にこの段階を経て、現時点での相続人を確定させたとしても、次は、その相続人全員(数十名になることもあります。私が担当した案件で最高人数は約50名です。)から相続登記を完了するためにハンコをもらう必要があるわけです。
具体的に現在土地を管理している方の名義にする場合でいうと、相続人全員の方に実印にて遺産分割協議書(管理者の方の単独名義とする内容)に押印してもらい、かつ、印鑑証明書も提出してもらうことが必要となります。
しかし、このような場合、相続人間=親族といえども、親交が全くないということもあり得るので、親族だからということでスムーズな交渉ができるという保証はどこにもありません。逆に、「お前の名義にするならハンコ代をよこせ。」とハンコ代を要求されることもあり得ます。
もし、このような件があるという場合はではどうすればいいのでしょうか。
やはり、専門家=弁護士に依頼して、相続人の確定から遺産分割の交渉まで依頼するのが得策と思います。
弁護士はこういった戸籍の取り寄せに習熟している事務所スタッフを事務所に置いていますし、遺産分割についても調停手続を利用し、かつ、相続分の譲渡・放棄といった法律上の規定を駆使して、多数の相続人から少数の相続人のみと協議をすれば足りる状況にもっていくこともできます。
いずれにせよ、相続には期限がないからといって、放置をしておくとこのような問題が生じます。
まずは、このような問題が生じないよう相続発生後は相続人間で話し合いをして、相続=遺産分割の処理を後回しにしないようにすることが肝要かと思います。