紛争の内容
成年被後見人Aさんは、長男Bと二男Cの二人の子がおり、成年後見人である当職にて後見業務を務めていました。

元々Aさんと同居していた二男Cは、Aさんが施設に入ってからもAさんの自宅に住み続け、長男Bとは折り合いが悪かったのです。

Aさんは、施設で認知機能以外特に持病もなく暮らしていましたが、高齢のため亡くなり、成年後見人から相続人であるB及びCにAさんの財産が引き継がれることになりましたが、BとCはここでもその不仲から双方どちらかに財産が引き継がれることを良しとせず、成年後見人からは財産の引継ぎができない状態が続きました。

そこで、裁判所に上記状態を報告し、対応につき当座BとCとの遺産分割協議が終了するまで、「相続財産の保存に必要な処分」をするための相続財産管理人選任(民法897の2)をすべきであるとの意見を出しました。

交渉・調停・訴訟等の経過
裁判所はBC間の争いについて理解を示し、相続財産管理人選任の方向性を認めたため、当職にて同選任申立を行い、成年後見人から引き続き相続財産管理人に選任されることになりました。

BCに対しては、Aさんの遺産の引継ぎには遺産分割協議が必要であることを説明し、両者はそれぞれ代理人弁護士を立て、遺産分割協議を成立させました。

本事例の結末
以上のとおり、BC間の遺産分割協議も整ったため、同協議結果を踏まえて相続財産管理人たる当職からBC各人に対しAさんの遺産等を全て引き継ぎました。

本事例に学ぶこと
改正民法897条の暫定的な相続財産の管理の対応について、相続人間で争いがある時なども活用が可能であると感じました。

弁護士 相川 一ゑ