紛争の内容
借地上の建物に居住していた借地人が亡くなったが、その借地人には相続人がいなかったため、土地のオーナーが借地の返還を求め、家庭裁判所に対して相続財産管理人選任の申立てをしたというケースについて、相続財産管理人に選任されました。
交渉・調停・訴訟などの経過
借地人には、晩年、身の回りの世話をしていた人物がいたため、その人物から借地人の財産を引き継ぎました。
調査の結果、相続人は見つかりませんでしたが、身の回りの世話をしていた人物に対して建物と預金を渡す旨の借地人の遺言の存在が判明したため、土地のオーナーと身の回りの世話をしていた人物を交え、借地をどのように処理するかを協議しました。
本事例の結末
当初、土地のオーナーは合意に基づき借地人の負担での更地返還を求めていましたが、そのような合意の効力は疑わしいこと等を理由に交渉を重ね、身の回りの世話をしていた人物の承諾を得た上で、土地のオーナー4、借地人6の割合で建物を取り壊した上で借地を返還する合意が成立しました。
土地のオーナーに建物の取り壊しを手配してもらい、借地人の財産から合意に基づく費用を支出し、残りの財産を遺言に従い身の回りの世話をしていた人物に渡すということで事件終了となりました。
本事例に学ぶこと
相続人なくして亡くなった方の財産関係を処分しようとする場合、家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。
相続財産管理人は相続人の調査を行い、相続人の存在が判明すればその者に財産を引き渡すこととなり、相続人の存在が明らかにならない場合には亡くなった方について権利を有していた債権者に対して残余財産の範囲内で支払いを行うことになります。