事案の内容
 被相続人である父親の遺言には、相続財産は全て、次男である依頼者様に相続させる旨の記載がありました。長男は、父親(被相続人)と折り合いが悪く、永らく遠隔地に住んでいましたが、葬儀の時に一時帰郷し、上記遺言の内容を知りました。
 長男は、葬儀の席では明確に異議を述べませんでしたが、大変不満そうだったといいます。
 そこで、依頼者様は、長男との間に禍根を残さないようにしたいとの想いでご相談にいらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟などの経過
 本件では、被相続人の法定相続人は、長男と次男(依頼者様)の2人だけであり、長男は依頼者様に対して、遺留分侵害額請求が可能な状況でした。
 遺留分侵害額請求の時効は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間」のため、葬儀の時(知ったとき)から1年以内に長男から請求を受けなければ、依頼者様は支払う必要はございませんでした。
 しかし、依頼者様は、1年間この問題が解決されないのは心理的に負担が大きく、また(長男には)遺留分という正当な権利があるのに黙っていることについて公平ではないと考えられました。
そのため、こちらから長男に対し遺留分に相当する金銭を支払うことを提案し、争いを未然に回避する方針で交渉を開始しました。

本事例の結末
 依頼者様の手元にある資料をもとに相続財産を計算し、その資料を添付した上で、相続財産の4分の1に相当する額をお支払いするとの合意案を持ちかけたところ、長男は納得し、合意に至りました。

本事例に学ぶこと
 本件の長男の考えは明らかではありませんが、こちらから、早期に、財産を包み隠さず公開し、正当な権利の分は支払うとの姿勢を見せることは、相手方との心理的摩擦を回避し、交渉をスムーズに進める上で有効な手立てだと思われます。
 本件は、このように早期にかつ適切に対応したため、事案が「紛争」にまで発展せず、速やかに終結したものと思われます。