紛争の内容
韓国籍の母親が日本国内で亡くなり、相続人は長女(姉)と長男(弟)の2人のみ。
しかし、母親の遺産は、日本国内にある預金・株式・不動産(総額5,000万円くらい)のほか、韓国国内にも1億円程度の預金があり、その預金は母親から長男に生前贈与されていた。
長男が韓国預金の遺産該当性を争うなどし、当事者間での話し合いが進まなくなったため、遺産分割の交渉事件として受任した(長女側の代理人)。

交渉・調停・訴訟などの経過
長男側も弁護士をつけ、代理人同士で話し合いを進めることになった。
遺産の全体像を明らかにしたうえで、まずは日本国内の財産について遺産分割協議書を取り交わした(不動産を含め、お互いの取得分の合計価額が2分の1になるように調整をした)。
韓国にある預金については、長男が韓国での納税手続き(贈与税の申告及び納税)をなかなか行わず、そのために日本に送金することができないという状態が長く続いた。

本事例の結末
粘り強く交渉を続けた結果、最終的には、長男に韓国での納税手続きを済ませてもらい、預金の2分の1に相当する金額から、長女が日本で相続税を支払った際に受けた外国税控除額を差し引くなどの調整をして、送金を受けることができた。

本事例に学ぶこと
遺産の一部が国外に存在するケースでは、その評価額をどのように算定するかも問題になるが、実際に換価して日本に送金するためにどのような手続きが必要になるのかにも注意を要する。
税金の関係でも、日本と外国、双方における納税が必要となってくるため、その国の税務に精通した専門家(税理士)の助言を受けることが必須である。