事案の内容
依頼者は,先立った夫の荷物の整理をしているとき,遺言書を数通発見しました。遺言書を数通持参され,今後の手続きについてお聞きしたいと来所し,まずは遺言書を家庭裁判所へ提出し,「検認」という手続きをする必要があることをご説明しました。また,遺言書の中には封印のあるものがあったため,勝手に開封してはならず,家庭裁判所で相続人の立会いが必要である旨を説明しました。手続きが煩雑であるため,当事務所に遺言書検認申立手続きをご依頼されました。

本事案の結末
 遺言書の検認期日には,事前に相続人全員に通知が届きます。
今回は,相続人の方は依頼者のみ参加され,検認手続が行われました。
検認の手続きは,裁判所が遺言の有効・無効を判断するのではなく,検認時点における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するためにあります。
当日は,遺言書の発見状況,封印の有無,遺言書の紙やペンの種類,日付,文字,記載内容などについて,裁判官とともに確認する作業が行われました。
 なお,遺言書を発見された場合,検認を経ないで遺言を執行し,または家庭裁判所外において開封をすると,5万円以下の過料に処されますし(民法1005条),相続人間のトラブルの元となりますので,注意が必要です。

本事案に学ぶこと
 以上のように,検認手続自体はあっさりとしたものです。
 遺言書の検認が終わると,遺言書に基づき,不動産や預貯金等の名義変更が可能となります。
 もっとも,遺言書がある場合にも,兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があります。遺留分とは,遺言によっても害することのできない最低限相続できる財産をいいます。
 遺留分の権利行使期間は,相続の開始及び遺留分が侵害されていることを知った日から1年,または相続開始の日から10年に限られますが,この期間内に遺留分減殺請求権が行使されれば(口頭でも行使したことになります),遺留分の範囲で遺言の内容が否定される可能性があります。
 相続問題は感情的対立を生むことも多いので,生前に遺言(公正証書)を作成し,意思を明確にすることが,無用な争いを避けるためにも有益であると思います。

以上