紛争の内容
精神的な遅滞により、判断能力を欠いている方が成年被後見人本人でした。実は、ご家族がすでに後見人に選任されていて、長年の後見実績があったのですが、それまでに報告をしていなかった本人名義の通帳が新たに発覚し、その金額は、1000万円を超えておりました。
そのため、裁判所は、調査の必要があると考え、専門職である弁護士に依頼がありました。具体的には、家庭裁判所から弁護士会に推薦の依頼があり、弁護士会から任せられ、家庭裁判所に選任されることになりました。
その結果、当職が、親御さんに代わって、成年後見人に選任されました。
ただし、後見業務は、大別して、①身上監護、②財産管理とございまして、当職に依頼があったのは、②財産管理に限っておりました。
交渉・調停・訴訟などの経過
後見人としては、財産管理の必要がありますので、ご家族から、本人の財産を預かり、引き継ぐ必要があります。後見人は、本人の財産を「善良な管理者の注意」をもって管理する法的義務がありますので、銀行の預金等についても、名義登録をします。通常、「●●後見人弁護士✕✕」といった名義になります。
そして、本人の収支を確認し、財産目録を作成して、裁判所に報告をします。
その上で、今回の課題であった、本人名義の口座が報告されていなかった経緯、お金の流れに不信な点がないかなどについて、金融機関に照会したり、ご家族から詳しくお話を伺ったりして、把握し、裁判所に報告をします。
また、本人の収支が赤字であったりとか、当分の間、大きなお金が動く予定などがなければ、銀行と成年後見支援信託という制度を活用して、大金を預ける(多くは、1000万円以上の金額です)ことになります。
そのような後見業務を経た後、特に問題がなくなれば、弁護士がいつまでも後見をする必要は低くなりますので、再び裁判所の決定を得て、財産管理を適切なご家族に引き継ぐことになります。
本事例の結末
本件も、無事に、調査業務が完了し、裁判所の懸念も解消されましたので、ご家族に引き継ぐことになりました。
本事例に学ぶこと
当事務所は、埼玉弁護士会からも信頼されているため、弁護士会からの要請を受けて、さいたま家庭裁判所に後見人候補者として推薦されることが少なくありません。
成年後見業務については、引き続き、力を入れて参りたいと思います。