紛争の内容
裁判所から、行方不明者の財産を管理する不在者財産管理人に選任されました。行方不明者は相続人として遺産を受け取るべき立場でありましたので、遺産分割調停に参加しました。
交渉・調停・訴訟等の経過
遺産は、不動産と預金でしたが、不動産を管理する他の相続人から電気代や水道代等の不動産の管理費用を遺産から取得することを承諾してほしいと言われましたので、この点は了承しました。他方、亡くなった方の葬儀費用等を支出しているから、遺産から取得したいという意見が出されましたが、これに関しては遺産から支出すべきものではありませんので、拒否をしました。
次に、不動産については、行方不明者の代理人としては取得を希望せず、他の相続人において取得を希望するとのことでしたので、代償金を支払ってもらうことを要請しました。
本事例の結末
不動産の管理費用を相続人が遺産から取得すること、他の相続人が不動産を取得する代わりに代償金を支払うという遺産分割調停が成立しました。
その後、回収した代償金をどのように扱うべきかを検討するため、改めて行方不明者の住民票を調査した結果、不在者財産管理人の選任の申立てがなされた後に、住所の変更がなされていることが判明し、現住所に問い合わせをしたところ、行方不明者がそこに住んでいることが分かりました。本人確認をして、回収した代償金から、不在者財産管理人としての報酬と事務費を差し引いた残額を返還しました。
本事例に学ぶこと
相続人が亡くなった人のために費用を支出していたという場合に、どの費用については遺産から取得することを認め、どの費用については遺産から取得することを認めてはならないのかを学びました。また、住民票を調査すると、行方不明者が発見されるということが起こるのだということを学びました。
弁護士 村本 拓哉