紛争の内容
被相続人は90代のおばあ様で、独身の娘と自宅で同居していました。
いずれも高齢のため、生活に苦労する部分がありましたが、遠縁の親戚の方が通って面倒を見る等、2人の生活を支えていました。
しかしながら、あるとき娘が突然病に倒れ亡くなってしまい、被相続人も後を追うように亡くなってしまいました。
その親戚の方が2人の入院手続や葬儀等を行いましたが、被相続人の相続人に当たる人がいなかったため、相続財産管理人(現・相続財産清算人)の選任申立てがなされました。

交渉・調停・訴訟等の経過
亡くなった娘の唯一の相続人が、今回の被相続人であったため、本件では、被相続人固有の財産の他、娘の財産についても相続財産法人に含まれることになりました。
そのため、娘名義であった自宅について被相続人への相続登記を行うなど、相続手続を行いました。
その後、自宅の換価や預貯金・動産類の整理を行いました。
また、本件では、相続財産管理人の選任申立てを行った親戚の方から、特別縁故者への財産分与の申立てがありました。
そこで、聞き取ったご事情や経緯、相続財産の状況などを踏まえ、裁判所に意見を提出いたしました。

本事例の結末
特別縁故者への財産分与については、提出した意見に沿った審判がなされ、一定の財産を分与することになりました。

残余の財産については国庫に帰属することになりました。

本事例に学ぶこと
相続人に当たらない方が相続財産を得るためには、特別縁故者として財産分与の申立てをする必要があります。
特別縁故者に当たるかどうかは、法律上の要件があるため、単に親族であることだけでは認められませんが、被相続人の療養監護につとめていた等、深い関わり合いがある場合には、検討の余地があります(本件では、高齢の母娘を支えてきた親戚の方が特別縁故者として認められています。)。

弁護士 木村綾菜