本事例は、税理士・弁護士・司法書士が運営する「相続・遺言さいたま相談室」のHP上で2015年5月7日に公開されたものです。そのため、現行の法律・制度とは異なる場合があります。
グリーンリーフ法律事務所では、税理士・司法書士等の専門家と協力関係を構築し、相続分野のフルサポートを目指しています。
Aさんから相続登記手続きの依頼を受けました。
亡夫Bさん名義の不動産の名義書換の依頼です。依頼を受けた不動産は自宅建物と底地の土地1筆の2物件です。他の不動産はないということでした。
しかし、まれに、認識をしていない私道の持分や隅切り、墓地の持分などの不動産が存在する場合があります。
この事例では不動産を確定させる資料が乏しいので名寄せ帳の写しを取得することを勧めました。名寄せ帳とは不動産所在地の役場が所有者に固定資産税を課税するため、その市区町村内にある不動産を所有者ごとにまとめたものです。したがって、Bさんが市内に持っているすべての不動産が記載されます。
特殊なケースで名寄せ帳に記載されない不動産もありますが、不動産確定の重要な資料になります。
しかし、Aさんは面倒なことはしたくないし、余計なお金をかけたくない。他の不動産は絶対無いから、名寄せ帳の写しを取得せずに手続きをしてかまわないとのことでした。
それでは、念のために遺産分割協議書に「他に発見された相続財産はAさんが取得する」との文言をいれて作成することをお話しすると、相続人である子供にかんぐられるのもいやなので、入れないで欲しいとのことでした。そこで、2物件で作成した遺産分割協議書に署名捺印をもらい、書類をそろえて登記を完了させました。
手続きが完了して数年後、Aさんから連絡がありました。聞けば、自宅前の公道が拡幅され、市が拡幅分を買収するそうです。市の担当者が不動産を調査したところ、拡幅分の土地はすでに分筆されているものの、まだ、Aさんの亡夫Bさん名義のままなので、急いでAさん名義にしてほしいと言われたそうです。
この不動産は亡夫Bさんが取得する前から、すでに買収をみこして土地を2つにしていたようです。
再度遺産分割協議書を作成して、相続人の署名捺印や書類の収集が必要です。
一部の書類は前回の相続登記に使用したものを再度利用できますが、小さな1筆の土地だとしても集める書類は変わりませんので注意が必要です。