本事例について
本事例は、税理士・弁護士・司法書士が運営する「相続・遺言さいたま相談室」のHP上で2015年5月7日に公開されたものです。そのため、現行の法律・制度とは異なる場合があります。
グリーンリーフ法律事務所では、税理士・司法書士等の専門家と協力関係を構築し、相続分野のフルサポートを目指しています。
旧い農家に嫁いで、10年前に夫から財産を取得したDさんですが、「長男に全部相続させる」という公正証書遺言を遺して他界しました。
この遺言を知った長男、長女、次女は全員がびっくりしてしまいました。それというのも夫の相続の時に、遺産分割協議で散々話し合って、
1)実家を継がない長男は、実家を継がないのだから金融資産だけ相続させる、
2)実家の農業を継ぐ長女はお母さんの面倒を見ながら農業を継続する代わりに、農地を相続させる、
3)次女は、金融資産を相続させる、
4)自宅やアパートや駐車場の農地以外の不動産は配偶者が相続する、
という合意が成立していたのです。
それ以降、長男は実家とは関係ないサラリーマン生活を楽しみ、長女はお母さんの面倒を見ながら必死に農業を続けていました。
それがお母さんが遺した遺言によると、実家に寄りつきもしなかった長男が全てを相続すると書いてあるのだからたいへんです。長男自身も、その遺言を執行したくないという始末です。
結局この遺言は使われずに、不動産は長女で、金融資産を長男と次女で分け合うという遺産分割協議が成立したわけですが、「遺言は相続人の幸福に配慮したものでなければならない」と思いました。