本事例は、税理士・弁護士・司法書士が運営する「相続・遺言さいたま相談室」のHP上で2015年5月7日に公開されたものです。そのため、現行の法律・制度とは異なる場合があります。
グリーンリーフ法律事務所では、税理士・司法書士等の専門家と協力関係を構築し、相続分野のフルサポートを目指しています。
当事務所で相続のご相談を受ける際、よくお客様からお聞きするフレーズがあります。それは「たいした遺産はないのだけど、揉めてしまって恥ずかしい話なのですが」といったお言葉です。
確かに、遺産が莫大である場合、利害得失が複雑に絡み合う可能性が高く紛争になりやすいのではないかと思いがちです。
しかしながら、実はそうでもないのです。
というのも、遺産が莫大、権利関係が複雑という場合、ある意味事前に紛争となる可能性が高いと予想が出来るため、紛争予防策=遺言書の作成がなされることが多いからです。
もちろん、遺言書の有効性や遺言書が何通も発見されれば、その後、裁判などをしなければならなくなることもありますが、基本的には遺言書があれば、相続問題はほぼ解決(残される問題は課税対策と遺留分対策ぐらいでしょうか)されるというのが一般的です。
そのため、実は、法律事務所で扱う相続問題は、相続税の納付義務が発生するような事案ばかりではありません。
たとえば、実家の土地建物とプラスαの遺産(預貯金、有価証券)が残されていて、これを実家に住んでいる子とお母さん及びその他の兄弟姉妹で争いになるということが意外と多いのです。
このような事案の場合、実家に住んでいる子は「長年、親の面倒を見てきたのだから、自分以外の兄弟には相続する権利はない」といった主張をします。
これに対して、実家に住んでいない側の子らは「親の面倒をみたといったってすぐに施設に入れたではないか。その分『タダ』で実家に住めたのだし、実家を相続するにしてもそれに見合う代償金を支払うべきだ」と反論し、紛争になることがままあるわけです。
※ 代償金
実家に住んでいない子らも、実家を相続する権利があるわけですが、そこに居住している兄弟姉妹がいるため、実家を相続する権利を譲る代わりに、それに相当する金銭を受領することがあります。この金銭を代償金といいます。
さらに、事案によっては、これに対して「実家を出て行く際に支度金をもらったはずだから、もう、相続する権利はないはずだ」といった再反論がなされることもあります。
このような場合、確かに遺産の分量はそう多くはありません。しかしながら、双方の主張には道義的に見て、また、経済的に見て、それぞれ理由があるといえ、それだけに対立が激しくなる可能性があるのです。
そして、法的にみても、
① 面倒を見てきた実家に住んでいる子の貢献度をどう判断するか、
② 実家の土地建物の時価評価をどうするか、
③ 相続前の生前贈与をどのように考慮するか、
といった問題を解決しなければならず、弁護士関与の必要性がかえって高いといえるのです。
遺産の分量などにとらわれることなく、上記のような問題がある場合、いつでも法律相談をご利用下さい。