本事例について

本事例は、税理士・弁護士・司法書士が運営する「相続・遺言さいたま相談室」のHP上で2015年5月7日に公開されたものです。そのため、現行の法律・制度とは異なる場合があります。
グリーンリーフ法律事務所では、税理士・司法書士等の専門家と協力関係を構築し、相続分野のフルサポートを目指しています。

寄与分(特別の貢献)があるかどうかが問題となったケース

父(被相続人)が亡くなり、母、長女、二女、長男の4人が相続人になりました。
しかし、遺産分割の話し合いがうまくいかず、結局、家庭裁判所で遺産分割の調停をすることになったのですが、問題となったのは、長男に寄与分があるかどうかということでした。
※ 寄与分とは、相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者がいるときに、その者の取り分を多くする制度のことを言います。

この長男の場合、17歳のときから父の縫製会社を手伝い、職人肌だった父の代わりに、会社の経営管理面を引き受け、卸問屋との交渉、外注の仕組みの確立、和服の縫製から洋服の縫製への業態の変化などを行ってきました。
その反面、働きに見合うような給料は、父が第一線から退くまで、もらうことはありませんでした。

他方、長女、二女は、縫い子として父の家業である縫製会社を手伝ってきました。ただし、いずれも結婚するまででしたら、長男と違って、長期間、縫製会社と関わることはありませんでした。

調停でもお互いの主張は平行線でまとまらず、審判の段階に移行し、家庭裁判所が遺産をどのように分けるかの決定をして、ようやく決着がつきました。この決定では、長男について10%の寄与分を認め、長女、二女には寄与分を認めませんでした。

寄与分は、特別の寄与があった場合に認められるのであり、特別といえない程度の寄与では、寄与分を認めてもらうことはできません。また、認められた場合でも、30%とか40%のような寄与分はほとんど認められることはありません。

長男の場合、経営管理面のほとんどを行ってきたこと、それに見合う給料をもらっていなかったことから、10%の寄与分が認められたものです。