紛争の内容
ご依頼者様はこの度配偶者Aさんを亡くされ、相続が生じました。

ご依頼者様夫妻には一人息子がいましたが、すでにお亡くなりになっており、Aさんのご両親も他界していたことから、Aさんの兄弟姉妹とご依頼者様の遺産分割になるものだと思われていました。

しかしながら、戸籍を調べてみると、Aさんには前の配偶者との間にも息子がおり、その息子さん(Bさん)が存命だということが分かりました。

ご依頼者様はこの事実を知らず、大変驚きました。もちろん連絡先も分かりません。

そこで、弊所にご相談にいらっしゃいました。

本件での相続人は、配偶者であるご依頼者様と、子であるBさんの2人ということになります。

遺産としては、ある程度の預貯金と自宅がある状態でしたが、ご依頼者様には、Aさんとの思い出深いご自宅で今後も暮らしていきたいというご希望がありました。

しかしながら、預貯金の残高が自宅の査定額の半分程度しかありませんでしたので、この査定額をもとに法定相続分で2分の1ずつ相続する場合には、例え自宅の取得が叶ったとしても、預貯金残高と自宅評価額の差額について代償金を支出しなくてはならない可能性がありました。

このような状況で、全く知らない相手であるBさんとの遺産分割交渉をするには弁護士が必要であるとして、弊所にご依頼頂きました。

交渉・調停・訴訟等の経過
弁護士において戸籍の精査や住民票の調査を行い、Bさんに連絡をとりました。

その際には、BさんとAさんとの関係性が分からなかったことから、なるべく丁重に、Aさんがお亡くなりになった事実とご供養のご案内を差し上げました。

また、遺産分割については、率直にご依頼者様のご希望を伝えるとともに、自宅の固定資産税評価額を今回の評価額とし、その評価額と同額の金銭的メリットがBさんに生じるようにご提案いたしました。

本事例の結末
結果として、Bさんはこちらの提案をそのまま承諾して下さいました。

また、Aさんのご供養も頂きました。お別れの機会をご案内できて良かったと思います。

本事例に学ぶこと
相続が生じてその手続のために戸籍を集めたところ、思いがけない相続人が現れることがあります。

普段から「自分が亡くなったあと」のことについて家族にお話ししておくことは重要ですが、様々な理由から、それは難しいということもあると思います。

そういう場合には、是非「遺言」を活用してください。

遺言で、のちに遺産分割が必要ないように手当しておくことで、家族のその後の手間や心配ごとを省くことができます。

また、相続・遺産分割の場面では、感情的な問題が先に立ち、話がまとまらない・ややこしくなるということも少なくありません。なるべく無用な争いを生じないよう、努めて冷静な、丁寧な対応を心掛けることが大切だと思っています。

弁護士 木村 綾菜