紛争の内容
家庭裁判所から選任を受け、相続財産清算人の業務を実施しました。

相続財産清算人とは、相続人の方が不存在であったり相続を放棄されてしまった場合に、遺産を処分できる人がいなくなってしまうことを避けるため、利害関係のある方が申立をして、第三者が清算を行うというものです。

今回の申立てにより、被相続人の方が保有していた株式の処分を行い、債権者への分配や最終的には国庫に帰属させるための手続を行います。

交渉・調停・訴訟等の経過
相続財産清算人の一般的な仕事の流れは、以下のとおりです(裁判所HPにも説明があります)。

① 家庭裁判所は,相続財産清算人選任の審判をしたときは,相続財産清算人が選任されたことを知らせるための公告及び相続人を捜すための公告を6か月以上の期間を定めて行います。この公告の期間満了までに相続人が現れなければ,相続人がいないことが確定します。

② ①の公告があったときは,相続財産清算人は,2か月以上の期間を定めて,相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします(①の公告の期間満了までに②の公告の期間が満了するように公告します。)。

③ ①の公告の期間満了後,3か月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。

④ 必要があれば,随時,相続財産清算人は,家庭裁判所の許可を得て,被相続人の不動産や株を売却し,金銭に換えることもできます。

⑤ 相続財産清算人は,法律にしたがって債権者や受遺者への支払をしたり,特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与するための手続をします。

⑥ ⑤の支払等をして,相続財産が残った場合は,相続財産を国庫に引き継いで手続が終了します。

今回の事案では、主に、古い株式(株券発行)について、現物の引渡しを受け、その後、証券保管振替機構において名義書換のための手続を行い、清算人の証券口座を開設して口座に移し替え、裁判所の許可を得て譲渡を実施するというものでした。配当金もプールされていたため、これを受け取る手続もありました。手続にはかなりの手間がかかりましたが、無事に売却することができました。

本事例の結末
遺産については、全て換価配当が完了し、最終的に余ったお金は国庫に引き継いで、無事に相続財産の精算が終了しました。

本事例に学ぶこと
特に、亡くなった方の債権者の方や、亡くなった方と特別の縁故があった(相続人ではない)方は、相続財産の処理に利害がありますので、選任を申し立てることがあります。

申立てには費用がかかりますが、相続財産を適法に処理するためには、相続人がいない以上、相続財産清算人によるほかありません。

弁護士 時田 剛志