紛争の内容
被相続人は、ハウスメーカーDH社による建設のアパートオーナーであり、DLM社にサブリースし、顧問のDL社が管理。さらに、DLM社の賃借人。
相続人調査したところ、相続人不存在が判明。
本アパートの収益性良好なことから、同アパートをDLM社が購入を希望した事案。
交渉・調停・訴訟などの経過
① 管轄家庭裁判所に申立て。予納金80万円。
② 選任を受けた管理人と共に、被相続人賃借住居の点検。
③ 管理人に対し、被相続人所有賃貸不動産購入希望を伝え、売却打診。
④ 売却結果(DLM社が購入できたか)は知らない。
⑤ H30.3.予納金の返還の通知。
⑥ 報酬清算により、終了。申立後1年10カ月で終了。
本事例の結末
① 被相続人所有不動産の売却については、管理人との面談時には好感触であったので、おそらくDLMが購入できたのであろう。
② 予納金全額が返還されたことから、被相続人の住宅ローンを賄って(オーバーローンとは聞いていない)、更に、管理人報酬を賄って、余剰があったと見込まれる。
本事例に学ぶこと
① 申立人、申立人関係者の意向を表明し、相当な金額で購入意思があることを当初から管理人に検討願うことは必須。
② 相続財産管理人選任が、事案によっては、多額の費用倒れとなる場合もあるが、本件のように満額の返還受けることもある。しかし、予め、被相続人の財政状況を知ることはほとんど不可能。
③ 本件は、高齢者へのローン審査から、ハウスメーカーが財政状況に不安がないことを知っていた。
④ 入居に当たり、連絡先として、遠縁の親族を捕捉していた。相続人調査後、同親族は相続人でないことはすぐに判明した。
⑤ サブリースオーナーが死亡し、相続人不存在となる事案に対する、一つのモデルケースとなる。

弁護士 榎本誉