紛争の内容
遺産は、二つの金融機関にある預貯金のみであるところ、配偶者相続人と、第三順位の被相続人の7名の兄弟姉妹(その代襲相続人4名)のうち、ひとりの共同相続人が全く協力してくれないので、相続手続きが進まない。

交渉・調停・訴訟などの経過
第三順位相続人の一人(代表者)の代理人に就任し、非協力的な共同相続人に、代理人就任と協力依頼のアプローチしました。
新型コロナ禍でしたが、面談希望であれば、相手方自宅まで訪問可能なので、是非とも返事が欲しいと連絡しました。
連絡お願い文を郵送3,4度、しかし、一向に連絡がもらえません。
そこで、依頼者には、このままでは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、それでも、相手方が協力してくれないならば、遺産分割審判によるほかないこと、審判に移行する前に、相手方に対しては、申立代理人からの問い合わせ、家庭裁判所からの問い合わせなど、お手間をとらせることを説明して、再度協力を請おうということになりました。
そして、さらに、非協力的な方の、法定相続分に応じた、預貯金払戻し金を引き渡す旨も申し添えて、返信を求めました。
交渉開始から、1年を経過しましたところ、一次相続の配偶者相続人が亡くなり、二次相続が発生しました。二次相続には公正証書遺言書があり、遺留分のない兄弟姉妹との遺産分割協議の問題は発生しませんでした。
漸く、検討しているので、時間が欲しいとの返事がありました。
さらに、具体的な協力の内容をお伝えして、各金機関の相続手続き依頼書への記入・押印、印鑑証明書の取得交付をお願いし、協力を得られました。
本事例の結末
協力を得られた結果、必要書類が整い、代表者が各金融機関で相続手続きを執り行い、めでたく、各相続人に法定相続分での金銭分配がかないました。
本事例に学ぶこと
本件の相手方の方は、共同相続人である実父の代襲相続人ですが、実母は離婚し、実父方の兄弟姉妹と感情的な軋轢があったようです。そこで、代理人弁護士という、近親縁者でない者が入ったこと、丁寧に手続きと、相手方の取得分を説明したこと、準備のために十分な時間を与えて、せかさなかったことから、十分な協力を取り付け、めでたく解決に至りました。弁護士を代理人に建て、丁寧な対応を繰り返すことで、良い結果が得られた事例です。

弁護士 榎本誉