紛争の内容
ご依頼者様のお母様がお亡くなりになり、その遺言によって、相続財産の大部分をご依頼者様が取得することになりました(なお、配偶者はすでに他界。)。
しかしながら、ご依頼者様には異父姉(母を同じくする姉)がおり、法定相続人であるこの姉から遺留分侵害額請求調停が提起されたとして、弊所に調停代理をご依頼されました。
交渉・調停・訴訟などの経過
本件の相続財産には多くの不動産が含まれていたため、評価額が争いになった場合には、事件の長期化や多額の不動産鑑定費用の負担が否めない状況でした。
そこで、弁護士から相手方の相続税申告書の控えの開示を要請し、その評価額を用いることを提案して、不動産の評価額に関する争いの激化を回避いたしました。
また、相続財産とは別に、ご依頼者様が受取人である生命保険金があり、相手方である姉からは、生命保険金も計算に含めて(持ち戻して)遺留分を算定すべきであるとの主張がありました。
この生命保険金の相続財産に対する比率は3割~4割程度であり、裁判例に照らしても、持ち戻しの対象となるか否かは判断が分かれるところでした。また、調停委員からも同旨の説明がありました。
訴訟に発展した場合の上記リスクや、生前贈与などのその他の争点の激化の回避、紛争自体の早期解決といった観点から、生命保険金を全額持ち戻して計算することは妥当ではなくとも、ある程度勘案して遺留分を計算することには一定の合理性がありましたので、ご依頼者様とご相談の上、生命保険金の半分を持ち戻したものとして遺留分を計算することを提案いたしました。
結果として、相手方の納得を得ることができ、無事、早期に調停成立に至ることができました。
本事例の結末
上記の通り、紛争の激化や年単位での長期化が考えられる事案ではありましたが、ご依頼者様のご協力もあり、8ヶ月程度と早期に調停成立に至りました。
本事例に学ぶこと
各ご家庭に様々な家族のご事情があるとは思いますが、遺言により相続人のひとりにだけ多くの相続財産を遺してしまうと、他の相続人の遺留分を侵害することにもなり、本件のように調停などの裁判手続きに発展することも少なくありません。
その場合に、不動産が多かったり、不動産の相続財産に占める割合が多かったり、生前贈与や多額の生命保険金があったりすると、紛争は激化・長期化する傾向にあります。
これから遺言を遺される方は、ぜひ遺留分について配慮をした遺言を遺されるようにご留意ください。
また、遺留分侵害があった場合には、その侵害額の計算はかなり専門的になりますので、一度弁護士までご相談頂くことをおすすめいたします。
弁護士 田中智美 弁護士 木村綾菜