紛争の内容
高齢の母親とご自宅で同居している息子様からのご相談でした。
母親が体調を崩し、急に認知症などの症状も進んでしまったため、自宅や施設での手厚い療養・介護が必要な状況となりました。
そのため、療養・介護のための費用が必要となりましたが、母親自身は、契約をしたり、預貯金を取り崩したりできる状況ではありませんでした。
母親には、ある程度の預貯金や今後入ってくる年金があったため、息子様はこれを療養費・介護費に充てたいと考えて、弊所にご相談にいらっしゃいました。

交渉・調停・訴訟などの経過
認知症等の影響により判断能力・意思能力が低下・喪失して、本人による預貯金の引き出しなどが難しくなってしまった場合には、成年後見制度を利用することが考えられます。
成年後見人は、本人に代わって、預貯金等の財産の管理や、必要な福祉サービス・医療などの契約を行います。
本件では、実際に母親の面倒を見ており、母親の事情や心情をよく把握している息子様を成年後見人候補者として、家庭裁判所に成年後見の申立てを行いました。

本事例の結末
ご親族からの反対なども無かったため、無事に息子様が母親の成年後見人に選任されました。
なお、本人にある程度以上のまとまった財産や収入がある場合には、その財産の取扱いに注意が必要なため、弁護士などの専門職が成年後見人または成年後見監督人に選ばれたり、親族の後見人と専門職の後見人の両方が選任されることもあります。
本件の場合は、本人である母親にはある程度の預貯金はありましたが、それほど高額でもなかったことから、専門職の成年後見監督人などは選任されませんでした。

本事例に学ぶこと
老後に関しては「誰がどのように面倒を見るのか」という実際的な問題の他にも、本件のような「費用は誰が出すのか」という問題を生じることがあります。
ご本人にまとまった財産や収入(年金・不動産収入など)があったとしても、ご本人の判断能力・意思能力が低下・喪失してしまった場合には、ご親族だとしてもその財産・収入を自由に動かすことができず、困る場面もでてきます。
そのような場合に有用となる制度が、成年後見制度です。昨今では、本件のように親族が成年後見人に選任されるケースも増えておりますので、ご家族の方で成年後見が必要となりそうな場合には是非ご検討下さい。

弁護士 木村綾菜