こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。

相続の方法について、相続人間の話し合いで折り合いがつかなかった場合、他の相続人から、遺産分割の調停が申し立てられることがあります。

遺産分割の調停は、各相続人が単独で申し立てることができますので、ご自身の知らぬ間に、遺産分割調停が申し立てられ、突然、裁判所から呼び出し状が届くという事態も考えられます。

もっとも、裁判所から決められた期日に予定がある場合や、裁判所が遠方にあり、簡単に裁判所まで行くことができない場合など、必ずしも、指定された期日に行くことができるとは限りませんよね。

この記事では、遺産分割調停の期日の呼び出しを無視して欠席することができるのかという点や、欠席した場合にどうなるのかという点、欠席した場合のデメリットとその対処法などについて、わかりやすく解説していきます。

遺産分割の調停とは

遺産分割の調停とは、相続人間で、遺産分割についての協議を行ったものの、その話し合いがまとまらなかった場合に、相続人の申し出に基づき、家庭裁判所において、調停委員を交えて、遺産の分割について、話し合いをするという手続きをいいます。

相続人間の対立が激しい場合や、相続人間で公平な遺産の分割を行うことが難しい場合などに利用される手続きで、第三者である調停委員が間に入って話し合いを行うことにより、相続人のみで話し合いをするよりも、スムーズに遺産分割についての話し合いを行うことができるというメリットがあります。

遺産分割の調停で決まったことは、「調停調書」という形でまとまります。

「調停調書」があれば、当該遺産を相続した相続人は、遺産である不動産の相続登記や、被相続人の預貯金の払い戻しの手続きが可能となるので、相続人間のみで協議して定めるよりも、簡易迅速に、遺産の分割を図ることができます。

遺産分割調停を欠席することの可否

遺産分割の調停を欠席できるのか?

 
では、遺産分割の調停が特定の相続人から申し立てられた場合に、他の相続人は、指定された呼び出しの期日に、必ず出席しなければならないのでしょうか。

まず、遺産分割の調停を欠席する場合には、当然のことながら、遺産分割の中でご自身の希望する条件を主張することができませんので、ご自身に有利な条件で遺産分割が行われる可能性が低くなってしまいます。

また、遺産分割の調停を欠席した場合には、下記で説明するようなデメリットもあります。

したがって、遺産分割の調停を欠席することに、何ら問題がないということはできません。

そのうえで、どうしても調停の期日に出席できないという場合には、下記の出席できない場合の対処法をご参照ください。

遺産分割の調停を欠席した場合のデメリット

法律上は、遺産分割調停の期日に、正当な理由がなく出頭しない場合には、その者に対して、5万円以下の過料が課されることとなっています(家事事件手続法258条1項、51条1項、同3項)。

もっとも、正当な理由については、実務上、穏やかに判断される傾向がありますので、実際問題として、5万円以下の過料が課されることは、あまりない現状だと考えられます。

では、遺産分割調停を欠席することで生じる一番のデメリットは何でしょうか。

それは、遺産分割調停の欠席が続くと、遺産分割の審判に移行してしまうことだと考えられます。

以下で、遺産分割の審判について、詳しく解説していきます。

遺産分割の審判とは

遺産分割の審判とは、相続人間で話し合いがつかない場合に、最終的に、家庭裁判所の判断として、遺産分割の決定を下すという手続きです。

遺産分割審判への移行

遺産分割の調停は、相続人全員の参加が必要とされていますが、相続人間で話し合いがまとまらない場合、遺産分割の調停は、不成立となります。

同様に、欠席者がいる場合は、遺産分割の話し合いがまとまる見込みがないことになりますので、遺産分割の調停は不成立となります。

そして、法律上、遺産分割の調停が不成立で終了した場合には、家事調停の申し立ての時に、家事審判の申し立てがあったものとみなされます(家事手続法271条1項、同4項)。

すなわち、相続人の欠席が続くと、遺産分割調停が成立する見込みがないと判断されてしまい、調停が不成立となりますので、自動的に遺産分割の審判に移行するということです。

遺産分割調停と遺産分割審判の違い

審判においては、調停とは異なり、相続人のうちに欠席者がいたとしても、裁判所が最終的な判断を下すことができます。

そして、遺産分割の審判の期日を欠席してしまうと、ご自身の主張や有利な証拠があったとしても、それを裁判所に提出することができず、その結果、裁判所は、出席者から提出された主張や証拠のみに基づいて判断をすることになります。

したがって、遺産分割の審判を欠席してしまうと、ご自身の主張を裁判所にくみ取ってもらうことができないため、ご自身に不利な条件で遺産分割が決められてしまう可能性が高いといえます。

小括

遺産分割調停の期日を欠席し続けると、遺産分割の審判に移行し、裁判所によって、ご自身に不利な条件で、遺産分割が決められてしまう可能性があるというデメリットについて、説明しました。

とはいえ、様々な事情により、遺産分割調停の期日に出席できないこともありうるかと思います。

以下では、遺産分割の調停に出席できない場合の対処方法について、解説していきたいと思います。

遺産分割の調停に出席できない場合の対処法

指定された調停の期日に抜けられない予定が入っていたり、裁判所が遠方であったり、または、他の相続人と顔を合わせる可能性があるために、裁判所に行きたくないなどといった事情があるために、どうしても調停に出席できないことも考えられます。

そのような場合には、以下のような対処方法が考えられます。

期日の延期や希望日を裁判所に申し入れる。

指定された調停の期日に仕事や予定が入っていて出席できない場合など、他の日程であれば出席できるという場合には、裁判所に、期日の延期を希望し、次回期日の希望日を提出することが考えられます。

指定された期日に出席できないことが判明した場合には、事前に、該当する家庭裁判所に連絡を入れて、指定された期日には出席できないことと、他の出席希望日を速やかに伝えましょう。

調停条項案に合意する。

相続人間で遺産についての争いをしたくないと考える場合や、他の相続人の主張に異論がない場合には、調停条項案に合意してしまうことも考えられます。

上述したとおり、遺産分割の調停は、欠席者がいた場合には、不成立となって終結しますが、出席者の話し合いで作成された調停条項案に欠席者が合意すれば、遺産分割を成立させることができます。

この場合、調停の期日に出席する必要まではなく、調停条項案に合意する書面(受諾書面)を調停委員に提出すれば、足りることになります。

電話会議システムやテレビ会議システムを利用してもらう。

裁判所が遠方にあるために、調停の期日に出席することが難しい場合、電話会議やテレビ会議を利用して、遺産分割の調停を進めることができることがあります。

もっとも、電話会議システムやテレビ会議システムは、家庭裁判所が認めた場合のみ、利用できる手続きですので、事前に裁判所に確認をする必要があります。

自身の相続分を譲渡する。

そもそも、遺産を相続する意思がなく、遺産分割の調停に出席したとしても、何ら主張することがないという場合には、他の相続人に譲渡してしまうことも考えられます。

ご自身の相続分の譲渡してしまえば、遺産分割の調停に参加する必要もなくなることになります。

弁護士を代理人とする。

遺産分割の調停について、弁護士に代理人を依頼することも考えられます。

弁護士であれば、ご自身の主張を法律的な観点から検討することができるうえ、他の相続人に弁護士が付いていた場合にも、安心して遺産分割の調停を進めることができます。

また、遺産分割の審判では、法的な主張と立証を行わなければならないので、法律の専門家である弁護士に依頼することで、ご自身に有利に審判を進めることができると考えられます。

まとめ

遺産分割の調停を欠席した場合に、どういうデメリットがあるかという点を解説しました。

どうしても、調停の期日に出席することができないという場合には、上記の方法で、欠席した場合のデメリットを回避しましょう。

また、遺産相続の問題は、複雑な法律問題が絡んでくることもありますので、遺産相続案件に精通した弁護士に相談することも大事だといえます。

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