被相続人が亡くなってご自分が相続人になったが放棄をしたい、あるいは、相続人ではないのだが親族がいるという理由でたまたま相続財産を管理しているものの、相続人がいない、という相談を受けます。
今回は、相続人がいない場合に相続はどうなるかについて、さいたま市大宮区で30年以上の歴史を持ち、「相続専門チーム」「不動産専門チーム」を擁する弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説を行います。
相続について
相続とは
相続とは、被相続人(亡くなった方)の権利義務(財産や負債など)を、包括的に承継することです。
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。
(相続開始の場所)
第八百八十三条 相続は、被相続人の住所において開始する。
相続人はだれか
相続人は、
①配偶者、子
②直系尊属(親など)
③兄弟姉妹
とされています。
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
第八百八十八条 削除
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
相続人がいない場合はどんな場合か
そもそも、上記の法定相続人がいない場合
被相続人に、上記にあげた相続人、すなわち、
①配偶者、子
②直系尊属(親など)
③兄弟姉妹
がいない場合には、相続人がいないことになります。
なお、養子であれば上記①の「子」に該当しますし、実子が他家の養子になった場合でも、実親子関係が法的に消滅するわけではないので、これらの場合は、相続人がいる場合に該当します。
相続放棄の場合
被相続人の財産が少ない、取得を希望しないという場合や、負債がある等の理由で、相続することを希望しない人もいます。
こうした場合に行うのが、相続の「放棄」です。
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。
なお、法律相談をしていると、しばしば、「相続は放棄しました」という方に出会います。
上記の民法の手続に従って家庭裁判所に相続放棄の申述をしている場合は、相続の放棄、になるのですが、単にもらわなかったり、他の相続人にあげたりしたという場合には、「相続の放棄」には該当しないことに注意が必要です。
こうした場合は、例外的な場合を除いて、後になって家庭裁判所に相続放棄の申述をする「相続の放棄」はすることができないので、相続人がいない、という状態にはなりません。
また、相続の放棄により相続人がいなくなるというのは、一定の期間が経過する事例が多いのが実際です。
まず、配偶者や子が相続の放棄をし、第1順位の相続人がいなくなります。
その後、第2順位、すなわち、親が相続人になり放棄をする、あるいは、親がすでに他界している、という事情を経て第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。
この、第3順位の兄弟姉妹が相続を放棄して、はじめて、相続人がいない、という事態になります。
なお、兄弟姉妹はすでに死亡しているもののその兄弟姉妹に子がいるという場合には、その子(一般には甥姪)が相続人になる場合もあり、その場合には、その子(甥姪)が相続放棄をすることが必要になります。
あるいは、各相続人が放棄する前に死亡したりする場合には、さらに相続が発生するため、思いもよらない人が相続人になったりしますので、そうした方が相続を希望しない場合には、相続の放棄が必要になります。
いずれにしても、実際の事案で、自分やある特定の誰かが相続人になるかどうかを確認したい場合には、こうしたコラムを読むだけで安易に判断せず、かならず、その事案について弁護士に聞きに行くことが必要不可欠です。
相続欠格・廃除により相続人となれない者が生じた場合
自分が有利になるように他の相続人を殺害したりした場合には「相続欠格」、被相続人を虐待したりしたような場合には「廃除」により、相続人になる予定であった者が相続人になることができなくなります。
その結果、相続人がいないという事態が生じえます。
相続欠格・廃除については、こちらのコラムもご参照ください。
相続人がいない場合には、どうすればよいか
相続財産清算人選任の申立て
上記のような、相続人がいない場合には、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てます。
家庭裁判所により選任された相続財産清算人は、
・相続財産を管理し、
・相続財産を換価し、
・被相続人の債権者等に対して債務を弁済します。
残った財産については、特別縁故者から分与請求がある場合には分与することがあり、それでも残った財産や分与しないことになった場合には、財産は、国庫に帰属することになります。
相続財産清算人の選任申し立て手続き
相続財産清算人選任の申立てができるのは、利害関係人(被相続人の債権者、特別縁故者、遺贈を受けた人など)と検察官です。
申立人は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に選任の申立てをします。
相続財産管理人の選任申し立てではだめなのか?
2023年5月施行の改正民法では、これまで「相続財産管理人」とされていた管理者が「相続財産清算人」として規定されました。
そして、新しく「相続財産管理人」の制度が設けられましたが、これは、遺産分割が確定する迄などの相続財産の保存などを目的としています。
従いまして、相続人がいない場合には、やはり、相続財産清算人の選任が必要になることが多いと考えられます。
第八百九十七条の二 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第九百五十二条第一項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。
相続人が行方不明の場合は、「相続人がいない」に当たるか?
なお、相続人がいることは分かっているものの、その相続人が行方不明ということもあります。
この場合は、相続人がいない場合ではないので、相続財産清算人の選任の申立てをするのではなく、「不在者財産管理人」の選任を申し立てるか、「失踪宣告」を申し立てることが必要になると考えられます。
第二十五条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
(管理人の改任)
第二十六条 不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
(管理人の職務)
第二十七条 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
3 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
(管理人の担保提供及び報酬)
第二十九条 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
2 家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他
(失踪そうの宣告)
第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪そうの宣告をすることができる。
2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
(失踪の宣告の効力)
第三十一条 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
(失踪の宣告の取消し)
第三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
相続人がいない場合の相続とグリーンリーフ法律事務所
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴
開設以来数多くの相続に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、相続に精通した弁護士が数多く在籍し、また、相続専門チームも設置しています。
このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・相続専門チームの弁護士は、相続案件や相続に関する法律相談を日々研究しておりますので、相続人がいない場合や、不在者財産管理人が必要な場合の相続問題に関して、自信を持って対応できます。
なお、費用が気になる方は、上記HPもご参照ください。
最後に
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
ぜひ、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所にご相談ください。