養子も代襲相続人になれる 代襲相続と養子縁組について

養子縁組をした子は嫡出子と同じ身分を取得するので、実子と同様、養親を代襲相続することができます。養子の子の場合は、養子縁組の時期と出生の時期で結論が分かれますが、この度、兄弟姉妹にあたる養子の子の代襲相続について最高裁が判決を出しました。

代襲相続と養子縁組

代襲相続と養子縁組

相続の場面で、養子縁組した子が、すでに亡くなった養親の代襲相続人として遺産分割に関わることがあります。
養子も養親の代襲相続人になれるのです。
まずは、「代襲相続」と「養子縁組」の2つの制度について、基本事項を確認しておきましょう。

代襲相続とは

代襲相続とは、
相続人となる者が相続開始以前に死亡したり、一定の事由(相続欠格、廃除)によって相続権を失ったりした場合に、その相続人の直系卑属が、その相続人に代わって、その者の受けるべき相続分を相続すること
です。

代襲相続の具体例

Aさん一家は、父A、母B、長男C、長女Dの4人で、Cはすでに結婚して子E(Aから見て孫)がいるとします。
長男Cは若くして亡くなり、その後、父Aが亡くなった場合の相続人は、

■母(妻)B
■長女D
■孫E

の3名です。

父Aが亡くなった時点ですでに長男Cが亡くなっているため、その子(Aから見て孫)であるEが、Cに代わってAを相続することができるのです。

これが代襲相続です。

代襲相続は、相続人が兄弟姉妹の場合にも起きることがあります。
つまり、一定の場合には、被相続人から見て甥や姪に当たる人が相続人になる場合があるということです。

長男Aは未婚で子供がいません。
兄弟として、長女B、次男C、三男Dがおり、A、B、C、Dの両親はすでに亡くなっています。
Cには、子E、Fがいます。
このような親族関係で、次男Cが亡くなり、その後、長男Aが亡くなった場合の相続人は、

■長女B
■三男D
■Cの子であるE及びF

の4名です。

長男Aが亡くなった時点ですでに次男Cが亡くなっているため、その子(Aから見て甥・姪)であるEとFが、Cに代わってAを相続することができるのです。

詳しくは、「兄弟間の相続で甥や姪が相続できる場合あり 代襲相続を正しく理解しよう」https://www.g-souzoku.jp/oyakudachi/20230816-2/)も参考にして下さい。

代襲相続できる人

代襲相続できる人

代襲相続できるのは、被代襲者(代襲相続される人)の直系卑属です。
すなわち、被相続人の子の子(亡くなった人から見て「孫」)、兄弟姉妹の代襲相続だと兄弟姉妹の子(亡くなった人から見て「甥・姪」)です。

また、被相続人の子の子が代襲相続人になるためには、その者が被相続人の直系卑属であることが必要です。

なお、上記に出てくる「直系」という用語ですが、
直系とは、親子関係(上下の関係)でつながっている系統
のことを言います。
両親や祖父母、子、孫などが直系の親族です。

これに対して、後ほど出てくる「傍系」という用語があり、
傍系とは、祖先は同じでも横に分かれた系統
のことです。

兄弟姉妹、おじ・おば、いとこ、甥、姪などが傍系の親族です。

養子縁組とは

養子縁組とは

養子縁組とは、
養親と養子との間に法律上の親子関係を生じさせる制度のこと
です。

養子縁組が成立すると、養子は、養親の嫡出子(法定血族である実子)としての身分を取得します。

つまり、養子は養親との間に血族関係はないものの、法律上は養親の実子と同様に扱われるということです。

養子縁組の種類

養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。

特別養子縁組は、普通養子縁組と異なり、養親となる者は原則25歳以上で配偶者があること、養子は原則として15歳未満であること、6か月以上の養育期間が必要であること等の違いがあります。

しかしながら、もっとも大きな違いは、
普通養子縁組の場合は、縁組後も実親との親族関係が続くのに対し、
特別養子縁組の場合は、縁組によって実親との親族関係が終了する
ということです。

つまり、
普通養子縁組の場合、養子は、実親と養親の両方を相続できるのに対し、
特別養子縁組の場合、養子は、養親のみを相続する
ということです。

養子と代襲相続

養子と代襲相続

先に述べたように、縁組の成立によって、養子は養親の嫡出子としての身分を取得します。

このため、相続の場面では、養子は、被代襲者(代襲相続される人)の直系卑属として、養親を代襲相続することができます。

これは、養子縁組の種類が、普通養子縁組であっても特別養子縁組であっても変わりません。

養子の子と代襲相続

養子の子と代襲相続

問題は、養子の子の場合です。

代襲相続人になれるのは被代襲者(代襲相続される人)の直系卑属であり、被相続人の子の子が代襲相続人になるためには、その者が被相続人の直系卑属(兄弟姉妹の代襲相続の場合は傍系卑属)でなければなりません。

この定義からすると、養子の子も要件を満たし、当然、代襲相続できるように思われます。

しかし、結論は、「養子縁組」と「養子の子の出生」の先後によって違うのです。

具体的に見てみましょう。

【養子縁組の後に養子の子が出生したケース】

このケースでは、

①AとCが養子縁組する

   ↓

②Cが婚姻し、Dが生まれる

   ↓

③Cが死亡する

   ↓

④Aが死亡する

という時系列を辿っています。

このケースでは、①の段階でCはAの嫡出子としての身分を取得しており、その後にDが生まれていますので、DはCの子であり、かつ、Aの直系卑属です。

このため、Dは、Cの代わりに、Aを代襲相続することができます。

【養子縁組の前に養子の子が出生していたケース】

このケースでは、

①Cが婚姻し、Dが生まれる

   ↓

②AとCが養子縁組する

   ↓

③Cが死亡する

   ↓

④Aが死亡する

という時系列を辿っています。

前の例とは①と②の順序が逆です。

このケースでは、②の段階でCはAの嫡出子としての身分を取得しますが、養子縁組前にすでに生まれていたDとAの間には血族関係が生じません。

すなわち、DはCの子ではあるものの、Aの直系卑属ではありません。

このため、Dは、Aを代襲相続することはできないのです。

国税庁のホームページ「養子縁組前に出生した養子の子の代襲相続権の有無」(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/06/04.htm)も参考にして下さい。

最近の最高裁判決の事例

養子の子と代襲相続の問題に関連して、今般、最高裁で、「被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は、被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができない」との判断が出されました(令和6年11月12日第三小法廷判決)。

この最高裁判決のケースでは、

①Bが婚姻し、D及びEが生まれる

   ↓

②BがおばであるCと養子縁組する

   ↓

③Bが死亡する

   ↓

④Aが死亡する

という時系列を辿っています。

繰り返しになりますが、被相続人の子の子が代襲相続人になるためには、その者が被相続人の直系卑属(兄弟姉妹の代襲相続の場合は傍系卑属)であることが必要です。

上記ケースは兄弟姉妹の代襲相続の場合であり、D及びEは被相続人Aの傍系卑属ですから、一見すると、Bを代襲してAを相続することができるように思われます。

しかしながら、最高裁は、被相続人の子が相続開始前に死亡した場合等について、被相続人の子の子のうち被相続人の直系卑属でない者は、被相続人の子を代襲して相続人となることができない旨を定めた民法の規定が、兄弟姉妹が被相続人の親の養子である本件のようなケースにも当てはまるとの考え方から、【養子縁組の前に養子の子が出生していたケース】と同様の結論を下したのです。

このように、養子縁組と代襲相続が絡む事案では、誰が相続人になるのか、判断が難しいことがあります。

少しでも不安に思ったら、相続に強い弁護士に相談することをお勧めします。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 田中 智美
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